非アングロサクソンの会計基準を確立させてきた日本とドイツの両国において、1990年代以降、国際会計基準(IAS)及び米国の一般に認められた会計原則(US-GAAP)に準拠した決算報告へのシフトを求める動きがみられようになった。これは、グル-バルスタンダードへの日本とドイツ両国の対応の1つとして提起された問題である。本年度の研究では、アングロサクソン会計基準に準拠した決算報告実務をいち早く採り入れたドイツの代表的企業であるダイムラーベンツ社とバイエル社の2つのケースについて事例研究として考察を行った。ダイムラーベンツ社は、米国の一般に認められた会計原則(US-GAAP)による決算報告を実務展開した最初の企業である。1992年度にニューヨーク証券取引所に上場するにあって、米国基準の決算報告を義務づけられた。このため、同社は、ドイツの商法基準と米国基準を二元的に適用した決算報告を作成・開示した。バイエル社は、1994年度に国際会計基準(IAS)を適用した決算報告をドイツの商法基準の枠内で作成・開示した最初の企業である。 本年度の研究で明らかにした点は、ドイツ企業が「会計国際化」の要請のなかで国内基準(商法基準)と国際基準(IAS/US-GAAP)のダブルスタンダードに適応した会計行動を採っていることである。本研究の成果を日本企業が抱えるダブルスタンダード適応問題の1つの示唆を与えたものとして次年度以降の研究課題に活かしていきたい。
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