国際会計基準の設定をめぐって世界的な規模での議論が日本とドイツで起きている。これは、日本とドイツの企業が国際資本市場で資金の調達を行うに際し、IAS(国際会計基準)またはUS-GAAP(アメリカの一般に認められた会計原則)に準拠した財務報告を行うことが上場の条件であるとされているためである。このため、IAS/US-GAAPがグローバルスタンダードであるとしたうえで、これへの適応が日本とドイツの企業に要請された。最近、両国の会計基準設定機関によって、連結会計、金融商品会計、税効果会計、退職給付会計、キャッシュフロー会計、セグメント情報などの新しい会計基準が日本とドイツで設定されているのも、このようなグローバルスタンダードへの適応に外ならない。 本研究では、このIAS/US-GAAP適応の財務報告の企業行動について、日本とドイツの代表的な企業実務についての事例研究を行い、両国における上場企業の国際会計実務の特徴を摘出している。 とくに、ドイツにあって国際会計基準への適応が最初のヨーロッパ共同体会計指令の変換を通じて成立した1986年商法典の段階からさらに発展して、IAS/US-GAAP適応の商法条項の新設をへて、1998年にドイツ会計基準委員会の発足に結実していることを明らかにすることができた。
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