研究概要 |
会計情報を媒介様式として組織階層の上下間でアカウンタビリティ関係を設定することは経営管理の一般的な実践のなかで広く観察される現象であるが、最近の研究では、そのようなアカウンタビリティのスタイルが戦略の有効な実施や創発を妨げている側面も指摘されている。そこで、有効な戦略的マネジメントを実施するためにどのようなスタイルのアカウンタビリティを適用することができるのかを理論的・実証的に研究する必要があるが、本年度の研究では、特に我が国の戦略的コスト・マネジメントのなかで実際に適用されているアカウンタビリティのスタイルとプロセスの実態を観察することに主眼を置き、数社について実態調査を行うとともに、その調査結果について専門の研究者や実務家との間で意見交換を行った。調査サンプルはまだ多くないので、現時点では一般的な結論を述べることはできないが、会計情報と非会計的な情報の両方がさまざまな組み合わせのもとで戦略的なマネジメントを支援するために用いられていること、および、組織階層間及び組織横断的にかなり強いインターラクションを伴うアカウンタビリティ関係が設定されている状況が観察された。したがって、そこでは、例えばロバ-ツ(Roberts,J.)がいう「社会化を行うアカウンタビリティ」も戦略の実施や創発に有効であると考えられる。ただし、そのような性質を持つアカウンタビリティであっても、その適用の意図やプロセスには企業間で差があることも観察されている。次年度では、インタビュー調査を引き続いて行いながら、これまでに得られた知見がどの程度一般的に適用できるのかを明らかにしていく。
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