近年、原価企画やリーン生産などに見られる日本的な戦略的コスト・マネジメントは内外の研究者や実務家の間で大きな関心を集めている。他方、欧米の文献では、特に1980年代以後、戦略的コスト・マネジメントや戦略的管理会計の議論がややノーマティブな観点で主張されている。そこで、日本的コスト・マネジメントと欧米に見られる戦略的な議論どの間にどのような接点が見られるのかということが問題とになる。 本研究では、この問題について特に会計情報を媒介様式とするアカウンタビリディのスタイルとプロセスという観点から理論的・実証的検討を行っているが、それは、戦略的管理会計論におけるさまざまな主張の実践的な可能性を明らかにするには、その利用態様の1つの表現としての会計情報を媒介様式とするアカウンタビリティのスタイルとプロセスを明らかにすることが有用であるという観点に立っている。理論的な検討は欧米における議論を参考として行ったが、我が国におけるその実践的妥当性を検証するために我が国企業十数社の経理担当者や経営企画の担当者等を対象とするインタビュー調査を行った。この調査では、欧米の議論と我が国の実務の間では少なからずギャップがあることが確認された。しかし、我が国企業においても、バランスド・スコアカードのようなツールを導入することに強い関心を持っている企業が少なからず存在していることが観察されたし、また、クロスファンクショナルなチーム活動や組織横断的な活動に関連したアカウンタビリティのあり方については、我が国企業の製品の企画開発のマネジメントあるいは原価企画活動の中である種の水平的なアカウンタビリティやチームとしてのアカウンタビリティが存在しているというケースが確認された。これらは、戦略的コスト・マネジメントの中で今後、欧米でいわれているアカウンタビリティのスタイルとプロセスが少なくとも部分的に我が国にも出現する可能性を示唆唆している。
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