1.銀行の株価と、取得原価による純資産額、有価証券の時価評価差額、およびデリバティブの時価評価差額の関係を実証的に分析した研究から得られた発見事項は次のとおりである。(1)1株当たり純資産額と株価のプラス相関を所与としても、有価証券とデリバティブの評価益が大きい銀行ほど、株価もよりいっそう高く形成されている。(2)銀行に関する限り、店頭デリバティブの評価損益と金利関連デリバティブの評価損益は、それぞれ統計的に有意な形で株価形成に反映されており、とくに金利スワップの情報が重要である。(3)デリバティブの契約額や想定元本が大きいほど株価もよりいっそう高く、のれんの代理変数として解釈されている可能性がある。 2.SEC基準で連結財務諸表を作成する日本企業の株価と企業年金会計の情報項目の関係を実証的に分析した研究から得られた発見事項は次のとおりである。 (1)株価水準に対して、年金以外の一般資産と前払年金費用は統計的に有意にプラス相関し、年金以外の一般負債は統計的に有意にマイナス相関する。(2)オフバランスとされている年金基金自体の年金資産の公正価値は株価水準とプラスに相関し、年金給付債務は株価水準と有意にマイナス相関している。 3.地価税から推定した土地の時価と株価水準の関連性の実証分析から得られた発見事項は次のとおりである。(1)原価主義の純資産額と同等に、土地の未実現損益と株価水準の間には統計的に有意なプラスの関係が存在する。(2)有価証券の未実現損益は注記等から直接に入手できる公開情報であるが、地価税額からの大まかな推定時価は信頼性の低い情報変数であるが、株価形成に反映されていることから、この情報の目的適合性は極めて高と推測される。
|