3年間の研究計画において、相互に密接に関連する次の2つの問題を取り扱う予定であった。(1)会計基準の国際的調和の測定方法の開発と適用。(2)会計ルールの相違の会計データへの影響の測定方法の開発と適用。両者を結びつけるキーワードは「国際的調和」と「比較可能性」である。 まず(1)に関しては、関連文献の渉猟およびそれら先行研究の検討を行った。それによって、先行研究が提示している定最的比較研究の到達点と限界をある程度整理出来た。会計ルールごとの測定に関しては成果を挙げつつあるが、会計基準ごとに測定された集中度や類似性の測度をどのように集計すれば、財務諸表全体の比較可能性の変化を表す指数に変換できるのかという問題が残されている。 一方、(2)に関しては、グローバル・スタンダードとなりつつあると言われているIASを標準として、そこからの偏差として特定国の会計制度を位置づけるという作業(この方法の是非も検討中)を進めつつある。とりわけ、IASと日本の会計基準との大きな相違として指摘されている有価証券の評価と年金負債・費用の計算のうち、年金会計に焦点を絞り、年金会計基準の変化(新IASの採用)による日本企業の財務諸表データ(とりわけ、負債の額と費用の額)の変化の測定を試みた。その結果に関しては、「11.研究発表」に示した論文においてその一部を公表しているが、負債の増加・費用の増加による財政状態及び経営成績の悪化である。 今後は、まず、(1)に関する方法上の問題点を克服し、分析のツールとしての価値を高めることが必要となる。また、(2)に関しては、財務内容の実質が変化しないにもかかわらず会計測定ルールの変化によって生じる変化の本質的意味を理論的に掘り下げて検討することが必要となる。
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