科学研究費の交付を受けた期間において、以下の[研究の方法]に示す方法を適用し、[成果]に示すような成果があった。 [本研究の課題] 国によって会計の何がどのように相違しているのかを明確にし、さらに、可能な場合にはそれがどの程度相違しているのかを測定する。 [研究の方法] 課題に前半に対しては、会計ルールの相違の比較に止まることなく、会計ルールの適用形態・利用形態を考察し、さらに各国において期待されている会計の役割や会計が実際に果たしている機能の比較まで行った。課題の後半に関しては、日米企業の公表財務諸表を利用して、日米企業が同一の会計方法を用いて利益算定を行った場合と実際との比較から、両国企業の相対的「保守性度」を測定した。また、一定の取引モデルを設定して、欧米諸国・日本・IASCの会計基準に基づいて利益算定シミュレーションを行った。 [成果] 課題の前半に関しては、会計の国別相違が次の点において観察できた。【1!○】認められている会計方法、【2!○】認められている形式的弾力性(選択肢)、【3!○】認められている実質的弾力性(利益可変領域の大きさ)、【4!○】ルールの遵守度、【5!○】ルールの利用度、【6!○】会計方法選好、及び【7!○】会計ルールの使われ方である。 課題の後半に関しては、これまで定説となっていた、英国・米国・オランダの会計の類似性、ドイツとフランスの会計類似性が、必ずしも会計利益の算定においては観察できず、取引モデルの設定の仕方によっては、同一の業績に対して、英国と米国、英国とオランダ、ドイツとフランスにおいて同一の利益の算定は不可能となることが明らかとなった。また、国際会計基準は、利益可変領域に関して、米国・オランダに極めて近いものであることも明らかとなった。
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