本研究では、1995年1月17日に起きた阪神大震災で、災害状況の適時開示情報が株式市場でどう評価されたかを、まず時経的に分析し、次に開示日を基点に分析した。適時開示情報と株価変化の関係は超過収益率で分析した。サンプルは大阪証券取引所で適時開示した252企業である。 まず、時間の経過に沿ってみると、震災直後の1週間、証券市場は軽度のパニック(伝染効果)状態にあり、被災企業の株価は10%弱下げた。しかし、同時に市場指数もほぼ同水準の下げを記録した。被災企業の株価と市場指数との間に顕著な開きが現れ始めたのは、震災後1週間経過した市況反転時であった。その後、市場が震災の企業情報を評価するのに震災後3週間弱かかっていた。超過収益率は7月までマイナスを記録しており、3週間経過後の被害の適時開示にも存在意義があった。 次に、開示日を基点に検証した。阪神大震災に対する株式市場の反応は早かった。これに対し損害額の適時開示は時間的に相当遅れ、またその内容は投資家の判断材料としては不十分との見方があった。しかし、検証の結果、阪神大震災の災害状況の適時開示情報等が、開示後数日間、株式市場で評価されていた。特に、開示の時期が早いと株価下落が大きというように、開示のタイミングが株価反応に大きく影響していた。また、新聞報道されている被災企業の株価下落は大きかった。ただ開示された情報の詳しさと株価下落の関係は存在するが弱かった。 研究成果の一部は、台北で開催された1999年AAA/TAA国際会議等で報告され、また、査読誌「証券経済学会年報」(第33号)に掲載された。
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