研究概要 |
本研究では,平成9年度において財務会計システムを取り上げ,そのシステムを「計算」と「情報」という機能的側面から検討してきた。財務会計は法律との関わりにおいて機能している制度会計と密接に関連しており,そのシステムは真実性と信頼性という特性に支えられた会計情報をアウトプットしている。このようなシステムは,取得原価をベースとして展開される取得原価主義会計として特質づけられているので,この点をまず明確にすることからスタートした。 つぎに,財務会計システムの中心とする複式簿記にみる計算システムが利益計算と結合する局面を取り上げた。商法や企業会計原則に基づいて行われる企業の計算を支えているシステムとしての複式簿記(正規の簿記)は,もともと管理的側面を担っていたが,このシステムにさらに利益計算が加わってきたという点に注目して,最近公表されているテキストを中心に複式簿記にみる利益計算がどのように取り上げられているかという点を検討し,その整理を試みた。 また,財務会計システムにおける「計算」と「情報」に影響を与える問題として測定ベース(測定基礎)がある。IASCにおいては,取得原価(歴史的原価),現在原価,実現可能価額そして現在価値が測定ベースとして提示されており,情報利用者のニーズに適合する会計情報であれば,何も取得原価(歴史的原価)情報のみに限定される必要はない。時価ないし現在原価情報の開示は情報利用者から要請されており,そのことから本研究において時価情報の作成と開示についても検討した。
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