研究概要 |
本年度の研究では、わが国の企業倒産を予知する上で最も有用な財務指標を識別することを主眼とした。倒産判別モデルを提案している先行研究では、その仮説の設定基準が曖昧であり、合理的な判断にもとづいて仮説が設定された形跡がない。どのような財務指標が倒産判別に有用か(どのような財務指標をモデルに用いるか)」ということを明らかにすることが最も重要であり、このことが倒産事象自体をも解明することにつながると考え、それらの識別をおこなった。 1 手法及び利用データ これまで同種の研究ではほとんど用いられたことのない仮説探索型(Data Mining)アプローチをとった。またツールとして線形回帰の手法とノンパラメトリックな手法を併用し、両者の結果を比較した。データとしては1986年から1996年までわが国において倒産した898社と、107,034社からランダム抽出した300社の非倒産企業を用いた。先行研究や、最近見られる株価モデルが上場企業のみを対象としていることに対し、本研究では相応の規模を持つ中堅企業データ(データの平均資本金額は1億円以上、平均総資産額43億円以上)を大量に用いることによりわが国における倒産事象一般を対象とする分析を行うことができた。 2 結果 最終的に識別された指標には先行研究において有用とされてきた流動性指標や収益性指標、キャッシュフロー指標は含まれておらず、ストック情報中心の指標群となった。また、識別された指標からわが国の企業倒産は、信用力低下がトリガーとなることを明らかにすることができた。
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