本年度の研究では、平成9年度の研究によって識別された「わが国の企業倒産を予知する上で最も有用な財務指標」を用いて企業倒産判別モデルを開発した。モデル構築に際しては、線形、2次関数、正規性や等分散性を仮定しないモデル、またアメリカにおいて注目されているロジットモデルなど、さまざまなタイプのモデルを構築し、それらの判別力を比較し、わが国の企業倒産判別に最も適合したモデルを明かにした。 また、構築したオリジナルモデルを用いて、近12年間にわが国において倒産した上場企業を分析し、わが国の倒産企業の企業行動を明らかにした。その結果、わが国の倒産企業は倒産直前に共通した企業行動をとるとの知見が得られた。 さらに、本研究において開発したモデルを用いても、非倒産企業ど誤判別された企業がいくつか存在したことから、これらの企業に対するモデルの誤判別原因を詳細に分析した。その結果、モデルが誤判別した原因は、現行の企業会計制度の限界から、提供された財務諸表記載の財務数値が、当該企業の経済実態を表しきれていないことにあることが判明した。そこで、現行の制度を補完し、誤判別された企業の財務数値を企業実態に近づけるための財務数値修正手続を開発した。加えて、誤判別された企業の財務数値をここで提案した修正手続で修正することにより、より当該企業の倒産兆候を浮き彫りにできることを検証した。
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