今年度は、立教大学で定期的に開かれる保型形式セミナーにおいて、高階の郡のスペクトル理論について、佐藤文広氏(立教大学教授)と共同で基礎的研究を行った。また、9月に行われた第1回整数論オータムワークショップにおいて、Jordan環とその上の解析学、整数論について、研究上の討論を行った。これらは3次以上の対称行列の加法的数論において必須の基礎知識となるものである。 昨年度の研究で、2次行列に対する三井の問題の解決を与えたが、この問題に関する多重ゼータ関数を使う新しいアプローチを見出した。この方法は、完全な解答を与えることはないが、任意の次数の行列に適用でき、はるかに初等的である。 これに関連して、今年度は多重ゼータ関数や、関連するDirichlet級数の研究を行った。特にDirichlet級数のadditive convolutionの方法を開発し、11月に行われた整数論研究集会で発表した。また、同集会において、分担者は、代数体の加法的数論に関する故三井孝美氏の研究の詳細な分析を行った。これは行列の場合にも重要な示唆を与えると思われる。また、分担者が最近考察している3次の連分数、3次のワイル和は完成すれば加法的数論全体に大きな影響を与えると思われる。
|