研究概要 |
代表者らは、先に、モジュラー関数1/jのq展開の係数が交代的であることのひとつの証明を与えた。(研究発表論文参照)McKay&StraussがThompson seriesについて観察したq展開の係数の符号に周期性についても同様の現象として捉え、代表者らは、これらの事実が、サークル法の拡張を用いて証明されることを確認した。その中には、無限積で定義されるモジュラー関数が含まれるが、この場合、係数の符号はKloosterman和の符号と一致(従って周期的)する。(数学会年会1998発表)関連して、この現象をさらに広汎に観察した。一般的には、指標付きのモジュラー関数及びKloosterman和を扱うこととなる。その中で、無限積で定義されるモジュラー関数のうちに、係数が周期的にzeroとなる例があり、それがKloosterman和の消滅定理と関連することが、新たに発見された。ただし、この詳細な解明は今後の研究課題として残された。(数理研・研究集会1998発表、同報告集論文参照) またこれらの研究と合わせて、分担者らは、保型形式のLiftingの研究で、幾つかの成果を挙げた。まず、3次シーゲル保型形式のフーリエ係数の大規模な計算を実行して、ヘッケ作用素の固有値に関する宮脇の予想をサポートする新たな実例を与えた。(研究発表論文参照)つぎに分担者は、従来L関数の関数等式を用いる方法で構成されていたGL(2,R)の保型形式からGL(3,R)の保型形式へのLiftingが、theta correspondenceによっても得られることを新たに発見した。theta seriesを核とする積分変換において積分領域を制限するなどの方法を用いる。これはまた、Eisenstein seriesの新しい積分表示とも関連する。本研究は、今後の大きな発展を期待させる結果と思われる。(名市大芸工紀要等)
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