研究概要 |
本研究者は平成9年度-10年度の研究期間において、アフィンリー環のデマズール加群の組み合わせ論的構造を完全結晶の理論を用いて調べ、指標のフェルミオニック表示などに応用することである。昨年度は主にA型の系列のアフィンリー環について調べたが、今年度はA型以外の型のアフィンリー環や、また完全結晶でない有限結晶の場合への拡張を行った。以下にもう少し詳しくテーマ別に記す。 1. ねじれがあるアフィンリー環A^<(2)>_<2n-1>, A^<(2)>_<2n>の系列でレベル1の完全結晶をリストアップした。これらの完全結晶に対応するデマズール加群については現在調査中である。 2. ねじれのないアフィンリー環のすべての型に対し、古典的制限パスの1次元状態和のフェルミオニック表示を予想として提出し、q=1の場合に弱い意味で証明した。この予想は基本となる有限結晶のパラメトリゼイションに関する予想も含んでおり、今後取り組むべき基本的に重要な問題である。 3. 量子アフィン代数の有限次元表現からくる結晶基底は完全結晶であるとは限らないが、それから構成されるパスは表現論的に興味深いだろうということが、対応する可解格子模型のベーテ仮説から示唆されていた。本研究者らは、ある有限結晶のカテゴリーを考え、それから構成されるパスの集合が可積分表現の結晶基底の直和になることを示し、いくつかの例ではさらにテンソル積になっていることを見出した。
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