研究概要 |
今年度は、円分体の類数についてのいくつかの未解決問題を、円分体の関数体類似(円分関数体)で考察した。 先ず、上記の未解決問題から述べる。素数lに対して、h^+_lを実l分体Q(Ml)^+の類数とする。任意の素数lで、h^+_lはlで割れないだろうという予想(Vandiuer予想)は悪名高い。計算機の未発達だった時代、h^+_lの計算は困難で、小さいlに対してしかh^+_lの値は知られていなかった。l<163でh^+_l=1である。この事から、一般に、h^+_l<lで、結果としてVandiver予想が“自明"に成立するのではないかという期待さえあった。しかし、今では、h^+_lの値がおおきなlの例も知られており、任意のNでh^+_l>Nなるlが無数にあると予想されている。しかし、証明には程遠い。 以下、素数pを固定し、pの巾q及び変数Tを固定する。有理関数体k=F_δ(T)、多項式環F_q[T]をQ,Zの類似と考える。既約monic β=β(T)(←F_q[T])に対して、β-分体の最大実部分体k(μ_β)^+の複数をh^+_<T,β>とする。ここで類数とは、_q[T]のk(μ_β)^+での整閉包の類数の事である。今年度得た最初の結果は、q≠zの時、(N,P)=1なる任意のNで、Nlh^+_<T,β>なる既約monic βが無数に存在する事である。次に多少の条件の下で、plh^+_<T,β>なる既約monic βの無限個の存在も示した。証明には、関数体固有の事情を使うので、その手法は、元来の問題へは応用できない。
|