研究概要 |
昨年度に引続き,D-加群(線型偏微分方程式系)に対する種々の演算(関手)の計算アルゴリズムを確立し,同時に実際の計算を可能にするようなソフトウェアを開発することを目標に研究を行なった.具体的な研究成果は次の通り: 1. D-加群の演算の計算アルゴリズム:アフィン空間上で定義されたD-加群のアフィン部分多様体への制限(引き戻し)と,アフィン空間をファイバーとする積分(順像),およびそれらの導来関手の計算アルゴリズムを得た.これらはD-加群のあるフィルター付けに適合した自由分解を経由して計算される.さらに自由分解がフィルター付けに適合しているための必要十分条件を与えた。この条件は多項式環の場合にも従来は知られていなかったと思われる. 2. ホロノミック関数の計算アルゴリズム:種々の関数を計算機で正確に扱うことは困難であるが,我々は関数そのものではなく,それの満たす微分方程式系に着目してD-加群のアルゴリズムを適用することにより,関数等式の証明や,積分や積の満たす微分方程式系を求めるアルゴリズムを導いた. 3. de Rhamコホモロジーの計算アルゴリズム:アフィン空間から余次元1の代数的集合を除いた空間のde Rhamコホモロジー群の計算アルゴリズムを,積分の計算アルゴリズムの応用として導いた. 4. 実際のソフトウェアの開発とその公開:高山信毅が1991年頃から開発を続けている数式処理システムkanを用いて上記の1-3のアルゴリズムのプログラミングを行ない,高山のホームページ上で公開した.
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