研究概要 |
我々の目的は,有限群の2元体上のコホモロジー環の可換環論的性質を調べることである。我々は現在,有限2-群のコホモロジー環の巾零元について研究を継続中である。基本可換2-群のコホモロジー環は多項式環なので特別に調べる必要はない。よって以下,基本可換2-群ではない有限2-群だけを考える。 コホモロジー環の元ですべての部分群に制限して0となる元の全体はidealをなすが,これはessential idealと呼ばれる。essential idealはQuillenの定理(1971)により巾零根基に含まれる。essential idealの巾零指数は2以下であろうと予想されている。これについてはポーランドのMarx氏(1990)やベトナムのMinh氏(1995)の研究があるが,一般的な解決はされていない。 essential idealは,指数2の部分群に関するQuillen-Venkovの補題(1972)によって,コホモロジー環の0でない1次の元の生成する単項ideal全体の交わりである。従ってessential idealの巾零指数は,コホモロジー環の1次の元の積が0となる最大の長さによって押さえられており,これがessential idealの巾零指数を求める基本的な方法である。なおコホモロジー環の1次の元の積が0となる最大の長さに関してはSerre-Kroll-Okuyama-Sasaki-Minhの値が知られている。 平成10年度の研究としては次のことが考えられる。 1.上述の予想「基本可換2-群ではない有限2-群の2元体上のコホモロジー環のessential idealの巾零指数は2以下」が成り立つ,大きな有限2-群の集まりを見つける。 2.コホモロジー環の巾零元研究の手法をSwan群の決定に役立てる。
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