II.高いランクをもつヤコビ多様体の構成 (1)この課題については、[2]で画期的な結果を得た。すなわち、「定理:任意のg>0に対し、種数gの代数曲線でそのヤコビ多様体のモーデル・ヴェイユ格子のランクが4g+7以上のものが無限に存在する。」 これは従来の記録(1954年のネロンの主張:ランクが3g+7以上のものの存在)を大幅に更新するもので、予期せぬ結果であった。証明の鍵となるアイデアは、1変数ではなく多変数の有理関数体の上で定義された代数曲線のモーデル・ヴェイユ格子を使うことにあった。 (2)(1)に先行して種数2の代数曲線で行った実験でランク15以上を得た([1])。それは、1変数関数体上の、Iの意味でのモーデル・ヴェイユ格子を使い、さらに楕円曲線の場合に帰着して得られた。Martinet(仏ボルドー大学)の指摘をうけ、この結果を再考したことが、上述の(1)に結実した。 (3)(1)の結果を、さらに次のように深めた。「定理:任意のg>0に対し、種数のgの代数曲線でそのヤコビ多様体が絶対既約、かつモーデル・ヴェイユ格子のランクが4g+5以上のものが無限に存在する。」
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