研究概要 |
●昨年度に続いて,種数2のQ上の代数曲線C/Qでそのヤコビ多様体Jac(C)が非自明な自己準同型を持つものの族を構成し,その中からmodularity onjecture(谷山-志村予想の一般化)に関する我々の以前の判定定理が適用出来る場合を数多く求めた。また,2次実指標を持つnew form f(z)でそのFourier係数の生成する体が2次体Kであるものに対して,Jac(C)が志村のアーベル曲面A(f)/QとQ上同種となる種数2の代数曲線C/Qを具体的に求めいう問題を研究し,K=Q(√<-1>)となることが知られている6個の例(N=37,65,104,157,397,877)について完全な解答を得た。 ●上記の問題の研究にあたってまず,種数2の代数曲線C(j)/Qは射影直線P^1の二重被覆であるから,Cからある楕円曲線への2次の射が存在する条件は,Cが超楕円的でない対合的自己同型ρをもつことである,という事実に注目する。このとき,ρはP1の対合的自己同型pを引き起こす。Aut_Q(P^1)=PGL_2(Q)より,pを分数一次変換で表し,その2元6次形式f(X,Y)の空間に於ける作用(対称テンソル表現)を調べることによって,楕円曲線の二重被覆をなす種数2の曲線の最も一般的な方程式が,7個の自由パラメータを持つ族として得らた。 ●この族の特殊化により,特に,曲線族C(j)で,そのコビ多様体が2次体Q(√<j-12^3>)上ではj-不変量がjに等しい楕円曲線(Q-曲線)の積に分解するものを具体的に構成した。その方程式はY^2=F(X;j):=X^6+144X^5-(j-1728)X^4+224(j-1728)X^3-(j-1728)^2X^2+144(j-1728)^2X+(j-1728)^3と表される。 ●Jac(C)が四元数乗法をもつ種数2の代数曲線(QM-curve)について,具体的に研究した。まず,以前に得られていた例の他に,C/QがGL2型となるモデルを見い出した。また,それらの合同ゼータ関数の零点の偏角の分布に関して研究した。特に,佐藤-Tate予想の類似を定式化し,(上智大学の角皆宏氏との共同研究)。
|