研究概要 |
Cを平面凸曲線とする.この内部を等速直線運動をし境界において入射角=反射角なる規則で進む質点の軌道を研究するのがビリヤード問題である.ビリヤード問題の記述法として,状相空間のビリヤード写像を用いたり,配位空間の折れ線を用いたりすることがある.状相空間において,ビリヤード写像が積分可能ならば,Cは円か楕円に限るであろうというバーコフ予想がある.この予想は,1920年代に出されたが,十分な解決に至っていない.円をモデルとした部分解は1993年にビアリーによって与えられ,その別証明,非正曲率版,及び,高次元版は1998年度に印南の業績として発表された.また,昨年度に楕円をモデルとした場合にもある程度の成功を収めたと報告した,しかし,楕円をモデルとした場合には,証明にギャップがあり,十分ではないことが判明した. 本年度の研究では,このギャップを埋めることを試みた.その結果,バーコフ予想の解決の目途はまだたたないが,問題点が漸くはっきりとし,また,その予想の周辺で次のようないくつかの結果が得られた.コウスチックの連続性の条件を配位空間でのビリヤード軌道の平行線理論の応用として記述した.フラットトーラス上の測地線の性質と比較して,ビリヤードにおけるpoleの役割,poleから出る2つのビリヤード軌道の距離の単調性と境界の形の関係,同じ点を出発する軌道の発散性の意義,周期軌道の存在と境界の形の関係等に関しての類似点を見出した.
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