研究概要 |
Borsuk-Ulamの定理は位相幾何学や大域解析学の分野において重要な定理である。1933年にその証明が発表された古典的な定理であるが,その後,現在に至るまで多くの応用と一般化がなされている。 古典的なBorsuk-Ulamの定理は位数2の巡回群の作用と同変な球面間の写像の存在・非存在についての定理であるが,本研究においてはトーラスの線形表現を考え,この単位球面間の同変写像の存在・非存在について考察した。 トーラスの表現環の代数的構造より単位球面の同変K環の代数的構造を解明し,この結果を2つの球面間の同変写像の存在・非存在の問題に応用した。これにより古典的Borsuk-Ulamの定理の自然な一般化を得た。古典的なBorsuk-Ulamの定理やこれまでのその一般化が,2つの球面の次元に関する比較のみであったのに対して,本研究においてはある条件の下において2つの単位球面の間に同変写像が存在するためには,一方の球面は他方の球面の部分空間(線形表現に対しては,一方の表現は他方の表現の部分表現)でなければならぬという新しい知見も得た。 これは同変K環の代数的構造の詳細な考察より得られたものである。これまでのBorsuk-Ulamの定理の一般化の研究において同変K環が用いられることはあまりなかったが,今後はこの同変K環を駆使した研究が期待される。
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