研究概要 |
研究の最終的な目標は、パラボリックヒッグス束のモジュライ空間の幾何と、パラボリックベクトル束のモジュライ空間の幾何との関係である。前年度に引き続き、そのおもちゃの模型である、トーリック超ケーラー多様体の幾何とトーリック多様体の幾何との関係を調べた。前年度はいくつかの具体例で実験するにとどまっていたが、今年度は大きな前進があり、現在調べているおもちゃの模型でさえ、深い問題をかかえ、豊富な数学的内容を持つことがわかってきた。 具体的にはトーリック超ケーラー多様体のコホモロジー環の構造を調べた。まずその構造の具体的な予想を与え、その予想をある組み合わせ論的な問題に帰着させた。さらに、その組み合わせ論的な問題を低次元の場合に解決した。すなわち低次元のトーリック超ケーラー多様体のコホモロジー環を完全に決定した。トーリック超ケーラー多様体は、その超ケーラー構造を特殊なものにとると、次元が半分のコンパクトなトーリック多様体の和集合を変位レトラクトとして持つ。超ケーラー構造を変形すると、トーリック超ケーラー多様体自身のトポロジーは変化しないが、その変位レトラクトであるトーリック多様体の和集合のトポロジーは不連続的に変化する。このメカニズムを理解することが、当初の研究目標であったが、前述の予想の系として、この疑問に答えが与えられる。 これらの結果はCohomology Rings of Toric hyperKahler Manifoldsという論文にまとめられ、1999年1,2月に東京大、大阪大、筑波大の幾何セミナーで発表した。また、3月に来国ボルチモアにおける研究集会で発表予定である。
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