昨年度に引き続き、超ケーラー商、シンプレクティック商のトポロジーを研究した。さまざまな興味あるモジュライ空間がシンプレクティック商、あるいは超ケーラー商として構成されており、その構造の解明を目標としている。近年シンプレクティック商のトポロジーはモース理論の応用、同変コホモロジー論の発展により、急速に解明されつつある。ところが、超ケーラー商のトポロジーに関しては、その非コンパクト性のため、シンプレクティック商のトポロジーを調べる際に用いられた方法が適用できず、知られていることは極めて少ない。 昨年度に、可換群による超ケーラー商のコホモロジー環の構造について予想を与え、その部分的な解答を得た。さらに平成11年度はその予想を全面的に解決することができた。また、同変コホモロジー環の構造も整係数で完全な形で与えることができた。問題の本質は、超ケーラー商は半分の次元のコンパクトなシンプレクティック商の有限個の和集合を変位レトラクトとして含んでいるが、その有限個のシンプレクティック商の交わり方がある意味で単純である事を示すことにある。 非可換群の超ケーラー商の場合については、まず具体的な例を調べてみることが必要と思われる。現在は複素直線内の点の配置空間の余接束の部分的コンパクト化のコホモロジー環の構造について予想を与え、その予想を検証中である。その副産物として、複素直線内の点の配置空間の交点理論に関する結果が得られた。
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