研究概要 |
2年計画の1年目として,今年度はSeiberg-Witten理論の理解に努めた.そのために6月には,ゲージ理論の専門家である名古屋大学の太田氏とともに勉強会を開催した(参加者8名).そこでは,東京大学の川村氏によるFintushel-Sternの論文(Seiberg-Witten理論と結び目のAlexander多項式の関係を調べたもの)の紹介が,太田氏による貴重な解説を交えて行われた.また,私も,今までの4次元多様体論の結び目理論への応用について解説した.少人数で行われたため,率直で活発な議論が行われ,非常に有意義な勉強会であった.これを生かして,結び目が4次元球体内に張る曲面の研究を今,東京教育大学の安原氏と継続中である. また,Seiberg-Witten理論は位相的場の理論を通して,3次元多様体や結び目の量子不変量や有限型不変量と深く関わっている. 3次元多様体の量子不変量については,1次元コモホロジーの自明な元に対する量子SU(2)不変量の計算を行ない,この不変量からもCasson不変量が得られること,および,摂動不変量が導かれることを示した.この結果は,1998年1月にポルトガルのフンシャルで開かれた国際研究集会で発表され,論文は会議録に投稿する予定である. また,私自身の研究ではないが,東京大学の葉広氏が,最近clasper理論を推し進めている.これは,3次元多様体や結び目の有限型不変量を幾何学的観点から統一的に見直そうという理論である.私は,この理論を紹介するために9月に研究集会を開いた(参加者40名).この講義録は,今作成中であり,まもなく完成の予定である.
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