本年度、9月30日をもって、当該科研費の研究代表者を早稲田大学理工学部助教授・村上斉氏から引き継いだ(村上は、現在、本年7月までの予定で、スエーデンのMittag-Lefller研究所に出張している。)従って、以下に述べる研究実績の大半は、村上によるものである。 まず、4月5日〜4月8日、国民休暇村大久野島にて、研究集会「力学系の結び目理論への応用」を主催した(村上)。参加者は10名で、結び目のテンプレートによる表示について、力学系研究者と討論を行った。ついで、村上は、論文[3]において、多変数Alexander多項式をVassiliev不変量の立場から考察し、[4]において、Kontsevichによる絡み目の積分不変量を用いて、3次元多様体の新しい不変量を構成した。論文[5]においては結び目コボルデイズム不変量であるclasp数に関する渋谷の問題に対する反例を構成した。村上は、現在、有理3球面の自明なコホモロジーの元に対する量子不変量(リー群SU(2)および1のr乗根に付随した不変量)に関する研究、Vassiliev不変量とSeifert行列の関係に関する研究、ホモロジー3球面の有限型普遍量の研究を行っている。さらに、村上とV.Turaevは、3次元多様体の量子不変量(結び目の量子不変量を用いて記述できる)のある種の極限を取ることによって、Reidemeister torsion(つまり、Seiberg-Witten不変量)が得られるであろうという予想について、共同で研究を展開している。 9月以降。研究代表者を引き継いだ上野は、残りの研究費を、量子群解析・可解格子模型を研究している若手研究者へのサポートに使用した。
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