研究概要 |
Kolmogorov-Sinaiエントロピーの概念は、Connes-Stφrmerにより有限型von Neumann環上の自己同型写像の枠組みの中での議論として拡張された。彼らの定義を因子環Mの自己準同型写像σに適用することにより、σのエントロピーH(σ)とσ(M)のMに対する指数[M:σ(M)]との関係を、研究代表者と日合等が得ている。 非可換エントロピーの概念は、更にConnes-Narnhofer-Thirring, Souvageot-Thouveneot, Alisci-Fannes, Voiculescu等により、より一般的な(C^*-環等)作用素環論の中で、それぞれ新しい定義が、与えられてきている。上記のエントロピーと指数の関係が、成り立つのは、エントロピーの定義が、どのくらい良く、環(特に部分環σ(M))の構造を反映しているのかに、関わってると、考えている。 当研究課題のもとで、この問題を解決すべく、今年度は、先ず、無限型C^*-環の最も基本的な環であるクンツ環O_n(n=2,3,...,∞)の典型的自己準同型写像Φ_nに焦点を絞り、Φ_n(O_n)の構造解析をしながら、上記4種類のエントロピーの値を求めた。 Φ_nのエントロピーの値は、Connes-Narnhofer-Thirring, Souvageot-Thouveneot更にVoiculescu等の定義では、有限なnに対しては、log nで、無限大のnに対しては、0であることが判った。しかし、Alisci-Fannesの定義では常にΦ_nのエントロピーの値は無限大となり、本質的な違いがあることが、判明した。 これらの過程に於いて、Voiculescuの定義を緻密化した新しいエントロピーの定義に行き着き、現在研究中である。 なお、これらの結果の一部は、ウクライナでのコンファレンスと、ノルウェイでの研究会で、発表をした。
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