研究概要 |
Kolmogorov-Sinaiによるエントロピー及び位相的エントロピーの概念の、非可換化(量子化とも呼ばれる)として、作用素環上の自己同型写像に対するエントロピーの定義が、(CS)Connes-Stormer,(CNT)Connes-Narnhofer-Thirring,(ST)Sauvageot-Thouveneout,(AS)Alisci-Fannes,(V)Voiculescu等により、各々、von Neumann環的、C^*-環的、数理物理的見地から、なされている。 これらのエントロピーが、互いに、異なるのか否かという問題については、Nuclear C^*-環に於いては、(CNT)エントロピーと(ST)エントロピーが、一致するというSauvageot-Thouveneoutの結果以外は、あまり知られていない。 非常に非可換性の強い作用素環は、制限自由積から構成される。その様な環のうちで、Nuclearになるものの代表例は、クンツ環O_n,(n=2,3,...,∞)である。 当研究に於いては、nが有限な場合、O_nの環の構造から必然的に生じ典型的自己準同型写像と名づけられているΦ_nと、n=∞の場合の自由シフトと呼ばれるO_∞の写像に対して、(CNT)エントロピー及び(ST)エントロピー更に(V)エントロピーは、一致して、Φ_nの取る値は、全てlog nであり、自由シフトの場合には、その値は、全て無限大であることを得た。しかし、(AS)エントロピーは、たとえnが有限であっても、Φ_nに対して、常に無限大となる事を得て、前三者の定義との本質的な違いを示した。 又、環の大小に関するエントロピーの増減問題に対しては、テンソル積及び接合積に於いて、自由シフトは、エントロピーを増大させない事も得た。
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