研究概要 |
フーリエ解析と測定理論との関連についての研究実績の概要を述べる,測定理論の原型は,「ボルンの量子測定理論」であるが,数学の言葉でいえば,1の分解と非常に近い概念で特に,フーリエ解析でいえば,waveletと密接に開達する.このような枠組の中で測定理論を数学として考察した.現時点で,「測定公理」から得られる結果をいくつか列挙してみる. [1]. 我々の持つ測定能力に応じて,種々の統計力学があってもよいと考える.たとえば,精密測定が可能という前提のもとに,ニュートンカ学は意味を持つ.また,時間平均に関する測定を前堤とするならば,従来の統計力学を考えればよい.ここでは,1023個の粒子からなるシステムにおいて,10^<18>個程度の粒子の情報を得ることが出来るというような測定のクラスがまた別の統計力学を生成することを示した.従って,統計力学の定式において,測定概念は本質である. [2]. 量子システムにおいては,三段論法(A⇒B,B⇒CならばA⇒C)は成立しないことは良く知られている.しかるに,古典システムにおいては,三段論法は正しいことが証明できた.また,A⇒B,B⇒Cならば,ある意味で,C⇒Aというような結論も言える.種々のロジックを測定論の中の定理とみたすという考えは,ロジックを現実に適用する際の正当性を保証するという意味で本質的である. [3]. 「測定誤差」についての一般論を展開できる.これによって,Heisenbergの不確定性関係の定式化が可能になった. [4]. 粒子のtrajectoryの概念の定義を得ることができる.したがって,何故,古典システムにおいては,Lrajectoryが中心的なのか?等に答えることができる. [5]. fuzzy情報についての詳細な議論ができる.情報は本来的には,測定によって得られのだから,この観点から情報理論を構築することは自然である. [6]. 統計学を測定理論の一側面とみることが出来る.カルマンフィルタと回帰分析の関係を明確にいうことができる.また,因子分析,ペイズの方法(事前確率⇒事後確率)等を測定の言葉で明確化できる. このように,我々の結果は,情報科学と総称される分野の全般におよんでいる.工学的なセンスで応月の範囲を積極的に広げることの重要さは十分認識しているが,現状では,「測定理論」の数理的基礎をより固めることに我々のエネルギーは集中した.
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