研究概要 |
計画調書の研究目的の欄における「研究の目的」の項で述べられた諸問題の研究を推進し、以下のような研究結果を得た。 I. (x,y)-平面で両端点がリサージュの図形を描きながら動く場合の弦の振動の数学モデルは、周期境界条件と周期境界関数をもつ線形1次元波動方程式の初期値境界値問題(IBVP)で記述される。昨年度解決された問題「2つの端点のx-成分の周期の比が無理数となっている場合の解の挙動」を更に発展させた問題「2つの端点のx-成分、y-成分が共に準周期関数となっている場合の解の挙動」は一般には大変困難な問題であるが、これらの準周期関数が定数と摂動項の和で表されるという特別な場合の解の挙動を明らかにした。2つの境界関数によって表される単純な合成関数がこの問題で本質的な役割を果たすことは本研究の以前の結果より知られているが、この合成関数に対して新たな概念である「優回転指数」及び「劣回転指数」を導入し、優(劣)回転指数とx,y-成分の準周期が、数論の条件であるDiophantineの近似不等式を満たせば、すべての解が、時間について準周期的になるという結果を得た。これを解決するために新しい形のReductionTheoremを証明した。但し、証明の手法は昨年定式化されたReduction Theoremの証明で用いられたKAM法を用いる手法とほぼ同様である。 II. 上記の1次元波動方程式のIBVPは、一般のn次元波動方程式(n≧1)に対するIBVPに拡張される。境界が一般の場合は非常に難しい問題であるが、今回、円形膜の振動でその境界が周期的に振動しているという物理モデルを数学的に定式化した円対称な2次元波動方程式のIBVPを研究し、解の挙動を記述する定理を得た。円対称の場合は、解の表現定理が知られており、これと上記の1次元の場合に用いられた方法を組み合わせることにより定理が証明される。
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