研究概要 |
研究代表者を中心に,学内における8名の研究分担者と1名の研究協力者が課題名の研究を行い,以下に述べる研究成果(学術論文10編)を得た. 1.村上は,関数微分方程式と関数差分方程式を中心に,時間遅れをもつ方程式の定性的研究を行った.まず,関数微分方程式に対し,解の安定性との関連で概周期解の存在を論じた.また,Degree理論を応用することにより,拡散項をもつある関数微分方程式が周期解をもつための条件を与えた.次に,線型関数差分方程式に対し,元の方程式の安定性と極限方程式の安定性との関係を調べ,基本解の総和可能性との関連で零解の一様漸近安定性の特徴づけをした.また,相空間における解の表現定理を確立し,有界解の存在や解の漸近同値性を論じた.さらに,Dafermosによって導入されたプロセスの概念を一般化することにより,より広範な方程式に適用可能であることを示し,応用として安定性に関するいくつかの結果を与えた. 2.竹中は,ある種の安定型確率過程に対し,その初等幾何学的性質を用いて,有限次元周辺分布による決定性を調べた. 3.渡辺は,汎関数解析による交叉局所時間の研究を行い,Brown運動に関するいくつかの結果の精密化を得た. 4.濱谷は,Wazewska-Lasota型差分方程式に対し,その有界解が大域的に吸引的であるための条件,および,解が振動的であるための条件を得た.また,アリ-効果をもつ有限時間遅れをもつロジスティック型差分方程式に対しても,有界解が大域的に吸引的であるための条件を得た.
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