研究概要 |
LR^<n+1>の複素近傍Ωにおいて、1階非線型偏微分方程式の初期値問題 (1) F(χ,∂_χu)=0,u(0,χ')=ψ(χ'),χ=(χ_0,χ')∈Ω(⊆¢×¢^n) を考える。Fとψはそれぞれ余接束T^aLR^<n+1>およびLR^n上の実解析的な実数値関数とする。本研究の目的は、Fがある実解析的な可積分ハミルトニアンF_0の微小摂動であるとき、(1)の無限分岐解(その存在は既知)に対し、その分岐が起こる場所や分岐の様相を明らかにすることである。研究期間の前半である本年度は、F自身が積分可能な場合に考察を限定した。 Fをハミルトニアンとするハミルトン系を (2) χ^^・=∂_ξF(χ,ξ),ξ=-∂_χF(χ,ξ) とする。また、(1)の初期データψから、T^aLR^<n+1>のn次元曲面C_oを C_o:=F^<-1>(0)∩{χ_0=0}∩{ξ'=∂_<χ'>ψ(χ')}と定める。s∈V(⊆R^n)をC_ψのn次元パラメータとし、t=0のとき初期点(y(s),η(s))∈C_oを通る(2)の解軌道をΓ_sと書く: Γ_s={(χ(t,s),ξ(t,s)):t∈LR}.(1)の解の分岐を見るには、写像π:(t,s)→χ(t,s)の逆写像π^<-1>の特異性を解析する必要がある。 この特異性について幾つかの例を調べる中でわかってきたのは、以下に述べる予想が成立するだろうということである:Fが積分可能だから、(2)の解軌道Γ_sはn+1次元のある不変トーラスT^<n+1>_S上に乗っている。自然な射影T^*LR^<n+1>→LR^<n+1>のT^<ん+1>_S上への制限をP_sとし、P_sの特異点の像集合(caustics)をΣ_sとする。 予想:任意のs∈V(⊆LR^n)およびΣ_sの(LR^<n+1>における)任意の開近傍U_sに対し、U_sに含まれるn次元解析的集合の無限列{W_j}が存在して、逆写像π^<-1>は各W_j上に分岐特異性をもつ。
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