研究概要 |
本研突の目的は、可積分ハミルトニアンF_0に微小な摂動Fを付け加えたF=F_0+Fに対して、次の1階非線型偏微分方程式の初期値問題の分岐解を考察することであった: (*)F(x,∂_xu)=0,u(0,x')=u_0(x'). この目的は今のところ一般的な形では達成されていない。ここでは、摂動Fがない場合に(*)の解の分岐の様子が具体的にわかるようなF_0とu_0の例が構成でき、その分岐の性質の一部は摂動を付け加えても保存されることを報告する。 構成した例は2変数である:K_0(l)=l_1-1/2l^2_2とし、F_0(x,ζ)=K_0(l)|_l_1=1/2(x^2_l+ζ^2_l)と置く。初期値は u_0(x_2)=1/2x^2_2と取る。このF=F_0とu_0に対し古典的な特性帯の理論を用いて(*)の解を構成すると、ある2次元単連結非有界領域Dと実解析的な写像π:D→R^2およびU:D→Rがあって、(*)の解はu(x)=U(π^<-1>(x))と表せる。したがって、(*)の解の特異性はπ^<-1>の特異性に含まれる。 さらに、この例では,領域Dのタイル張りD=∪^^∞__<k,l=1>D_<k,l>があって以下の性質1〜5を満たす: 1. 各D_<k,l>は、正方形の左上と右下の角を切り落としてできる六角形と同相である。 2. タイル張りは次の3種顯の張合せ(隣接関係)からなる: (1) D_<k,l>とD_<k+1,l>:D_<k,l>の右側の垂直辺とD_<k+1,l>の左側の垂直辺が共有される: (2) D_<k,l>とD_<k,l+1>:D_<k,l>の下側の水平辺とD_<k,l+1>の上側の水平辺が共有される: (3) D_<k,l>とD_<k+1,l+1>:D_<k,l>の右下の斜辺とD_<k+1,l+1>の左上の斜辺が共有される。 3. 各π|D_<k,l> :D_<k,l>→x(D_<k,l>)は同相写像で,像π(D_<k,l>)は原点を内点にもつ。 4. 逆写像π^<-1>は、各D_<k,l>の水平辺および垂直辺のπによる像の上に2価の分岐特異性をもつ。 5. l/k→∞のときx(D_<k,l>)→R^2、すなわち、R^2の任意の有界閉集合Kに対し、あるγ(K)>0が存在して、l/k【greater than or equal】γ(K)ならばπ(D_<k,l>)⊃Kとなる。さらに、任意のx∈Kを固定すると,各分枝 u_<k,l>(x)=U((x|_D_<k,l>)^<-1>(x)は、l/k→∞のとき、x^2_l+(∂_x_lu_<k,l>)^2→∞(j=1,2)を満たす。 このFげ0に微小な摂動Fを付け加えたF=F_0+Fに対しても、摂動Fに応じて写像π:D→R^2およびU:D→Rを取り換えると、(*)の解はu(x)=U(x^<-1>(x))と表せる。性質1〜5を満たす領域Dのタイル張りの存在は不明であるが、性質5を満たすDの部分領域列{D_<k,l>}の存在は示せる。
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