研究分担者 |
壇 和日子 筑波大学, 数学系, 助手 (40251029)
小林 孝行 筑波大学, 数学系, 助手 (50272133)
石川 保志 筑波大学, 数学系, 助手 (70202976)
梶谷 邦彦 筑波大学, 数学系, 教授 (00026262)
赤平 昌文 筑波大学, 数学系, 教授 (70017424)
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研究概要 |
各成分が、同一の正規分布に従う確率変数からなるn次の実対称行列を考える。但し対称性による制約を除いては各成分は独立とする。行列X^<(n)>の固有値の数直線上での配列から得られる経験分布は、n→∞とするときWignerの半円則と呼ばれる確率分布に収束することが知られている。一方ランダム行列の固有値分布に対するこの種の極限定理を導く方法として、行列を値とする確率過程X^<(n)>(t)で、各時刻tにおける過程の分布が、はじめに与えたランダム行列の分布に一致するものを調べてはどうかというアイディアがF.Dysonによって提起されていた。近年になってT.Chan,L.Rogers,Z.Shi,Y.Takahashi等によりこのアイディアは確率解析の手法により厳密化された。彼らはX^<(n)>(t)の固有値(λ^<(n)>_l(t),...,λ^<(n)>_n(t))から成るn次元の拡散過程が満たす確率微分方程式を研究し、それを通じて固有値の経験分布のなす確率過程のn→∞における極限挙動を調べている。しかしながら彼らの議論はWignerの半円則の導出という形では最終的にはまとめられていないし、確率微分方程式の係数に特異性があることから、その解の存在を確かめるために必要以上に難しい解析を行っているように思われた。これに対し我々は、半円則の導出に話を絞る限り、(λ^<(n)>_l(t),...,λ^<(n)>_n(t))の満たす上記の確率微分方程式ではなく、経験分布のStieltjes変換が満たす、より易しい確率微分方程式を調べるだけで十分であることに注目し、従来の議論を簡単な見とおしのよいものにした。さらにその方程式は、行列X^<(n)>(t)のレゾルベントを考えることによりたやすく導かれることを示した。なお、この成果は大学院生の平塚剛氏との共同研究によるものである。
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