研究課題/領域番号 |
09640241
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
南 就行 筑波大学, 数学系, 助教授 (10183964)
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研究分担者 |
檀 和日子 筑波大学, 数学系, 助手 (40251029)
平良 和昭 筑波大学, 数学系, 教授 (90016163)
神田 護 筑波大学, 数学系, 教授 (80023597)
梶谷 邦彦 筑波大学, 数学系, 教授 (00026262)
赤平 昌文 筑波大学, 数学系, 教授 (70017424)
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キーワード | 準位統計 / エネルギー準位統計 / 量子準位統計 / 点過程 / 量子カオス / ランダム行列 / 不規則系 / アンダーソン局在 |
研究概要 |
本年度は、物性理論、特に不規則系、ランダム行列、および量子カオスの垣論に共通して現れる、「準位統計」の現象論的な側面を数学的に基礎づけることに努力を向けた。ここで準位統計とは、量子系のハミルトニアン(数学的には自己共役作用素)が離散スペクトルを持つとき、それを統計的な面から特徴づけようとする研究である。(離散スペクトルを構成する個々の固有値をエネルギー準位、または単に準位と呼ぶ。)これは、スペクトルまたはその一部を定常な点過程のサンプルと見なすことによってのみ可能であるが、物理学者による従来の研究ではそのことが十分明確に意識されていたとはいいがたい。そこで本研究では、定常点過程の一般論の立場から「準位統計とは何か」ということを考察し、次のようなことを明らかにした。 1) 準位統計に現れる様々な平均量(その多くはM.L.Mehtaの書“Random Matrices“および長谷川洋氏の書「量子系の準位統計」(物理学最前線28、共立出版)において論じられている)の間に成り立つ関係式の多くは、点過程論でよく知られたPalm-Khinchinの等式から導かれる。 2) 定常点過程が定義された確率空間の上には、Palm測度と呼ばれるものが自然に構成されるが、準位の間隔分布などを観測することは実は、ハミルトニアンのスペクトルを点過程と見なしたときに、そのPalm測度を観測することに相当する。 3) 可積分なハミルトン力学系を量子化して得られるスペクトルはregular spectrumと呼ばれている。regular spectrumに対しては準位集積が見られるということを、1977年にBerryとTaborが論じ、その後Sinaiがその理論を、より数学的に定式化した。しかしSinaiの議論はBerry-Taborのアイディアとは微妙に異なっている。実はBerry-Taborの考えを忠実に整理し直すことで、数学的にはもっとすっきりした問題が立てられる。
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