研究概要 |
本年度は「箱玉系」の数理構造を「超離散化」および「結晶化」のふたつの観点から研究した.箱玉系とは,ソリトン的なパターンを生成するCelluar Automaton (CA)を,1次元的に配列した箱の中の玉の動きとして表現した離散力学系である.その時間発展パターンはソリトン的な性質を持ち,ソリトンの散乱には組合せ論的な規則がある.この系に対して, (1)一般化された箱玉系に対して,超離散化(ultra-discretization)の手法により,箱玉系が離散KP方程式(広田_三輪方程式)の1-reductionからの超極限操作によって得られる事を示し,具体的なソリトン解の表式を得た.さらに一般化された戸田分子方程式に対する超極限操作を用いて,箱玉系のソリトン的な性質,及び組合せ論的な性質を証明した.また,保存量を構成し,それによってソリトン性の証明の別証明を与えた. (2)最近,可解格子模型の絶対零度での配置パターンをCAの時間発展パターンと見る見方が提案された.樋上らはこの手法を結晶化(crystallization)と呼んでいる.この観点では,箱玉系はA型の組合せ論的R行列に対応するBoltzmann weightを持ち,各link上の状態空間をその対称テンソル積表現とする可解格子模型とみなす事ができる.そこで,crystal理論を用いて,素励起(ソリトン)の組合せ論的な散乱法則の証明や表現論的な保存量の構成などを行った.そして,もっとも一般的な箱玉系(箱の容量,carrierの容量,玉の数が任意であるもの)を構成し,ソリトン性の証明,具体的なソリトン解の構成を行った.
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