数学に計算論の視点を持ち込む(構成的にする)試みは、既存の2つの分野(数学・計算機科学)にまたがる学際的研究であり、数学が多くの科学技術の基礎をなしていることと情報技術の急速な発展を考えると、今後1世紀のうちに重要な学問分野に成長することが期待されている。特に構成的論理に基づく構成的数学はその証明からプログラムを取り出せることから、ソフトウェア工学や数値解析分野の一部を巻き込み、大きな学問分野となることが予想される。 本研究は、構成的証明からプログラムを取り出す1手法として実現可能性解釈に注目し、 ・実現可能性解釈により取り出されたプログラムの計算の複雑さの解析、 ・多項式時間計算可能関数など、特定の計算量クラスのプログラムが取り出せる構成的算術体系の特徴付け を行うための手法の開発、問題点の明確化、解決案の調査を目標にスタートした。 平成9年度から平成12年度にわたる4年間でいくつか重要な成果・知見を得ることができたが、一方目標を実現するために多くの分野(構成的数学・数理論理学・計算可能性理論・計算の複雑さ理論など)にまたがる成果・知見をどのような視点からどのように統合し、体系的な理論としてまとめあげるかという難しい問題が今後の課題として残されてしまった。
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