研究概要 |
1. 前年度に引き続き,条件付き平均値の方法を用いて,乱流における速度場の統計性を調べた.特に距離r離れた2点間における速度の縦方向の差分δu(r)≡u(x+re_x)-u(x)(u(x,t)=e_1・u)の確率密度関数P(δu(r))を,乱流の直接数値シミュレーション(DNS)により得られた場のデータを用いて解析を行なった.P(δu(r))はδu(r)を止めたときの粘性項の条件付き平均値H(δu(r))≡〈▽^2δu(r)|δu(r)〉とエネルギー散逸率の条件付き平均値G(δu(r))=〈|▽δu(r)|^2|δu(r)〉を用いてP(s)G(s)=exp(-∫^s_0(H(s′)/G(s′))ds′)と分布関数が見通しよく整理できる事がわかった. 2. さらに理論的解析を進めて,δu(r)H(δu(r))がスケールrより大きいスケールからスケールr以下のスケールへのエネルギー輸送と密接に関連していることがわかった.この事実とスケールrにおける特性時間の考察より,|u|≪1と|u|≫1におけるH(u)およびG(u)の漸近的ふるまいを推論し,乱流のDNSの結果と比較した.両者には良い一致が見られた. 3. ベクトル型並列計算機Fujitsu VPP500を用いて格子点数N=512^3までの3次元定常乱流を実現し,速度場と圧力場に関して確率密度関数をふくむ種々の統計量を計算した.特にNavier-Stokes方程式の各項のδu(r)を与えたときの条件付き平均値には,δu(r)に関する非対称性が見られるなど,興味深い性質が観察された.また,圧力場の統計についても,スペクトルのKolmogorv変数による規格化以外にレイノルズ数の依存性を考慮に入れる必要性があることなど,新しい知見が得られた. 4. 1次元の外力のあるBurgers乱流場の速度差ω(r)=u(x+r)-u(x)の確率密度関数について解析を行なった.その結果、ω(r)>0では,P(ω)∝ exp(-cω^3)という形で急速に減少する.一方ω(r)<0では|ω|が大きくなるにしたがい,まずP(ω)〜|ω|^<-α>,α≧3というべきで減少し,さらにP(ω)∝|ω|^<-1>というかたちをとり,その後さらにP(w)∝IXexp(-a|w|^β),β>0という具合に減少することがわかった.また,速度場の高階の微分(u^<(k)>≡d^ku/dx^k)についての確率密度関数を求め,|u^<(k)>|≪1ではべき的,|u^<(k)>|≫1では急速な減衰をすることがわかった.
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