研究分担者 |
岡 宏枝 龍谷大学, 理工学部, 教授 (20215221)
西浦 廉政 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (00131277)
岡本 久 京都大学, 大学院・数理解析研究所, 教授 (40143359)
宇敷 重広 京都大学, 大学院・人間環境学研究, 教授 (10093197)
西田 孝明 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70026110)
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研究概要 |
力学系の構造と分岐の研究については,構造安定性予想の解決により安定性と双曲性が本質的に同値になったので,その補集合である非双曲型力学系の理解が求められるが,林はその方向にあるPalis予想(構造安定な力学系とホモクリニック点を持つ力学系をあわせれば力学系全体の空間で稠密になる)の解決を目指して研究を行った.宇敷は複素力学系と超関数の理論をエルゴード理論に結び付けて研究を行った.辻井は主に多次元の区分拡大的写像のエルゴード理論的性質について研究を行った.2次元平面上の実解析的区分拡大的写像については有限個の絶対連続不変エルゴード的測度が存在し,ルベーグ測度についてほとんど全ての点の軌道の経験分布はそれらのいずれかに収束することを示した.一方,逆に区分拡大的写像において,微分可能性を有限階しか仮定しない場合には,ある開球の反復合成による像の半径がOに収束するような例があることを示し上記の実解析的な場合の事実が成立しないことを証明した.このことは長年の懸案を否定的に解決するものであった. 特異摂動的力学系の研究では,岡はConley indexの理論をslow-fast systemsと呼ばれるある種の特異摂動的ベクトル場に対して構築することを目指し,slow manifoldがnormally hyperbolicで1次元である場合について扱った.更に岡は区分線型で対称なbimodal mapの2パラメータ族の位相的エントロピーのパラメータに関する単調性の問題について研究し,パラメータ空間の大部分の領域における単調性と,パラメータ全域における等エントロピー曲線の連結性を証明した. 偏微分方程式の力学系的研究として,西田・吉原はRayleigh-Benard問題に対し大域的に分岐曲線を追跡し,解空間の大域的な分岐構造を解明するために,いかなる解析的基礎理論及び計算機援用証明法が必要かを研究し始め,パラメーターの値に対応した解の存在を保証する判定法を提出した.岡本はProudman-Johnson方程式の解の爆発に関して移流項が重要な働きをすることを示した.特に,移流項が爆発を抑制する働きがあることがわかったことは重要である.西浦は力学系の応用解析的研究として極限点の整列階層構造と自己複製パターンについて研究し,それがそのような構造の「端(Edge)」の近くで最もよく観察されることを見出した.
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