研究概要 |
論文(Buchholz-0jima)で,真空以外のあらゆる空間並進状態において,超対称性が回復の可能性の全くない対称性自滅の新しいパターンSpontaneous Symmetry Collapseを破ることを見出したが,この仕事により,熱力学的相(phase)の概念とそれを特徴づける秩序変数,表現代数の中心と系の対称性との間の整合的理解の重要性が明らかになった。9-10月の期間prof.Buchholzらの招待により,ウィーンErwin Schroedinger研究所で開催されたInternational Workshop on Local Quantum Physicsに参加し,同教授やDoplicher・Roberts両教授を含む多数の研究者との研究討論を行う中で,中心のspectrum,エルゴード性や中心に収束する物理量の近似列等を系統的に取り扱う手法に関する重要なアイディアを得た。帰国後独力でそれを発展させることにより,確率的ゆらぎを統制する大偏差原理の量子論的拡張によって,Kolmogorov-Sinai, Connes-Narnhofer-Thirring dynamical entropyをはじめとする量子確率論,量子確率過程の基本的諸概念が,対称性自滅に関するGoldstone定理や多粒子状態・凝縮状態へそれを一般化した種々の低エネルギー定理の系統的応用に際して極めて有効に働くことが,その後の申請者の研究を通じて明らかになってきた。現在,これらの成果をまとめた論文を準備中である。 この間,2回の外国出張と交通事故による怪我のために国内出張の機会を失ったが,国外から多くの優秀なvisitorsに恵まれて,有益な討論を行うことができた。
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