研究概要 |
平成10年度の前半は,Gottingen科学アカデミーからGauss Professorとしての招待を受けてGottingen大学理論物理学研究所に滞在し,そこに所属するProf.D.BuchholzおよびProf.H.Roosと標記の課題に関して集中的な研究討論を行う一方,対称性の破れのパターン分類の課題に独立に取り組み,幾つかの重要な成果を得た。前者については基本的な枠組は出来上がり,その概要を本年2月,京大数理解析で開催された研究集会「量子情報と量子カオスの数理」で報告したが,細部における詰めの作業が必要で,共著論文完成のための作業を現在継続中である。キーになるのは,時空各点の微小近傍で定義された局所的物理量の適当な族を用いて,任意に与えられた状態を可能なすべての相対論的KMS状態の集合上に写像することによって,各点毎の逆)温度あるいはその確率分布を定め,当該状態を種々のKMS状態の統計的混合として表することで温度平衡概念を拡張するもので,局所平衡概念の全く新しい定式化である。これは単なる抽象的定義ではなく,例えばmassless free scalar fieldを用いて局所温度状態の非自明な例が構成できる。これにより,熱力学・量子統計力学の一般相対論的拡張も可能となる。 論文3では超対称性に関する対称性自滅の新しいパターンSpontaneous Symmetry Collapseを見出したBuchholz-Ojimaの結果を,対称性の破れの可能なパターンすべてを枚挙し,分類することによってより広い視野から捉え直したものである。これについては,ドイツのBerlin自由大学理学部,Hamburg大学第二理論物理学研究所,Gottingen大学理論物理学研究所,フランスBourgogne大学理学部,スイスのLausanne大学理学部および広島大学理学部等でセミナー講演を行った。 平成10年秋にはLausanne大学数学研究所のProf.S.Maumaryより招待を受け,ゲージ理論におけるBRSコホモロジーを一般的なだい代数的・ホモロジー代数的観点から捉え直す研究討論を行い,共著論文作成のための共同作業を現在継続中である。
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