研究概要 |
本年度は、前年度に引き続き、d次元ユークリッド空間R^d上の連続写像の空間C(R^d,R^d)に値を持つセミマルチンゲールに基づく確率微分方程式について考察し前年度までにおよそ得られていた次の結果を成立せしむる条件の改良緩和への検討を行い、ほぼ満足すべき条件の下で示すことができた。すなわち、 1. C(R^d,R^d)-値セミマルチンゲールに基づく確率微分方程式のMarcusの意味でのcanonical extension(以下canonical SDEと呼ぶ)が定式化可能であることとその解の存在及び一意性。 2. C(R^d,R^d)-値セミマルチンゲールに基づくcanonical SDEの解の同相性、更に微分同相性。 3. canonical SDEの解の成す(微分)同相群上のstochastic flowのinverse flowは対応するbackwardのcanonical SDEの解として表現できること。 この結果によりstochastic flowとそのinverse flowとの一種の対称性をcanonical SDEを通じて表現することができた。 さらに、数理ファイナンスにおいて考察されているポワッソン拡散モデルや対数Levy過程はある特別なタイプのcanonical SDEの解として表現されることなど他の分野におけるcanonical SDEの応用可能性を幾らかは見出した。が、さらなる応用については今後の研究に待たれる。
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