研究概要 |
地球観測衛星ランドサット5号から送信されるTMデータでは6つのバンドの地表面解像度が30m四方であるのに対し、バンド6が観測する熱画像では120m四方と画質が劣る,そこで、我々の研究グループは熱画像の値に高解像度バンドの線形結合を加えることにより熱画像を改良する手法を提案し、視覚的には画質を改良することが出来た。ところが真の画像と改良画像との2乗誤差で評価すると、必ずしも元の低解像度画像との2乗誤差と比較して小さくなっていないことが判明した。この原因は1)画像間の距離として2乗和は適当ではない。2)すべてのバンドを用いた補正は良くない。という2つの可能性がある。また、3)線形結合の係数を推定するために用いる近傍の大きさも補正結果に大きく影響する。ことも分かった。1)は今後の研究課題とすることにし、2)についてNishii,Kusanobu and Nakaoka(1999)で情報量基準に基づいて画像選択を行なうことを提案し、その有効性を確認した。同時にこの手法は3)の問題についてもある程度の示唆を与えることが分かった。さらに、本手法を高解像度画像や、熱画像を平均化して得られる疑似低解像度画像に適応することによって、本手法の有効性を確認した。 衛星データの解析に関連した研究として以下の成果を得た。 ・土地被覆の種々の判別手法を評価する基準として、カッパ統計量が広く用いられているが、これを比較基準として用いることは不適当であることを示した。さらにエントロピーに基づいた基準を提案し、その検定統計量をえた。また、判別によるロスの考え方も紹介した。(Nishii and Tanaka,1999) ・森林と人口との関係についてすでに導出していた理論モデルに、各メッシュの標高差も取り入れた空間モデルは、広い適応範囲を持つことを示した。また広島県の実データに適応し、空間モデルの良さが検証出来た。(Tanaka and Nishii,1997) ・市区町村ごとの肺ガンによる死亡率を、海岸線からの距離、人口海岸の方向を説明変数として空間モデルを適応すると海岸線からの距離は有意に影響することが分かった。気化した海水の影響が示唆される。(発表準備中) ・時系列データをウェーブレット関数により展開し、その係数をベイズモデルによって縮小させると高周波ノイズの低減に有効であることを示した。(発表準備中)
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