研究概要 |
平成9年度に引き続いてSOR型反復の数理を中心に研究した.線形SORの収束定理として「行列Aが対角要素がすべて正のエルミート行列のとき,SOR反復が0<ω<2で収束するための必要十分条件はAが正値であることである」ことはよく知られている(Ostrowski-Reichの定理).これをやや一般化する定理としてHouseholder-John,Ortega-Plemmons,Newman等の結果が知られているが,これらはすべてP.Steinの定理「n次行列Hのスペクトル半径が1より小であるための必要十分条件は,正値エルミート行列Bを適当に選んでB-H^*BHが正値となるようにできる」から導くことができることを明らかにした.Ostrowski-Reichの定理に対するOstrowskiの証明およびVargaの書物に記載の証明はやや複雑であり,見通しが悪いが,この証明は明解であり,加速パラメータωの範囲とAの対角要素が正であることの意味がきわめて良く理解されるようになった.さらに,半線形SOR-Newton法の大域収束定理をすでに導出したが,そこでは導関数の有界性が仮定されており,この仮定は実際には不要ではないかと予想していた.我々の数値実験によると,この仮定が満たされない方程式に対してもSOR-Newton法は任意の初期値につき収束する.この証明を試みたが成功するには至らなかった.今後の研究課題としたい. 尚,近年,滑らかでない方程式に関心が持たれていることに鑑み,この分野で業績を上げている陳小君(島根大学)を研究分担者に加え,Uzawa法の収束,平滑化Newton法の効用等について研究討論を行った.これは次の研究に生きるであろう. また,SOR-Newton型解法の数理につき研究するうちに,Shortley-Weller差分近似が任意形状領域におけるDirichlet問題に適用可能であり,しかもその差分解は超収束することを見い出した.今後,本研究の発展としてこの現象につき研究を進めたい.
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