数値計算により、表面張力・重力・渦度の3つを分岐パラメーターとする"水の波の分岐問題"の大域的分岐構造を調べることが目標である。過去に、表面張力・重力のみを考慮した渦なし流れの問題に関する研究成果がある。そこで本研究では渦あり流れの問題を計算し、前の研究結果とあわせて全対象を捕らえようという計画である。 本年度は、水深無限の重力波で渦度(定数とした)をパラメーターとする分岐問題の数値シミュレーションを行った。同じ問題はすでにSimmen & Saffmannが扱った。しかしスペクトル法を用いコントロールパラメーターの扱い方を工夫することで、複雑に入り組んだ分岐枝の追跡ができるようになった。それによって彼等の計算では得られていない新しい分岐枝、分岐解を計算することができた。 本年度の研究内容をまとめると以下のとうりである。 1. 表面張力を無視した場合2重分岐点は存在せず、渦度をパラメーターとして変化させても定性的には分岐構造の変化はない。しかし極限波の波形、流体内部の流れの様子には違いが現われる。 2. 極めて微小な範囲で複雑な分岐構造を成していることがわかった。とくに高モード(モード5、6の計算を行った)では、2次分岐、3次分岐、孤立した分岐枝が存在する。 3. これまでの研究はすべて対称な波を扱ってきた。次の目標である非対称な解の存在を確かめるため、プログラムの開発を行った。 上記の結果は、'98国際数学者会議において中間報告を行った。
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