研究概要 |
無向グラフならびに有向グラフの到達可能性判定問題(各々を,UGAPおよびGAPと略す)は,1970年代から研究されている古い計算問題ではあるが,領域計算量が限定された計算過程を具体的な計算問題という形に表現し直したものであり,領域量に関わる計算量理論にとっては中心的な計算問題になっている.本研究では,UGAPならびにGAPに関して次に述べる結果を示した. 1.無向グラフGのパス幅(path-width)をpw(G)で表すとき,UGAPが決定性O(pw(G)^2log n)領域で判定可能であることを証明した.ここで,nは入力対象として与えられた無向グラフの頂点数を表す.また,これと同じ結果がGAPについても成立することを証明した.この結果から,パス幅が定数のグラフからなるクラスに対しては,UGAPやGAPが決定性対数領域で判定可能であることが判明した.これまで,UGAPやGAPが決定性対数領域で判定可能となるようなクラスとしては無閉路的なグラフ(つまり,森)のクラス以外には知られていなかった.従って,本研究の結果はこれ以外の新たなクラスを初めて提示したといえる. 2.更に,入力対象を二本の道だけからなるものに制限したとしても,UGAPが決定性対数領域完全になることを証明した.何も制限しない一般のグラフに対してUGAPが決定性対数領域困難になることや,無閉路的なグラフに対しては決定性対数領域完全になることが従来から知られていたが,今回の結果は,入力対象となる無向グラフの構造をどのように制限したとしても,(制限された)UGAPが決定性対数領域より下位のクラス(例えば,NC^1やTC^0など)に属することはないことの強い根拠を与えている.
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