研究概要 |
本研究では,無向グラフならびに有向グラフの到達可能性判定問題の領域計算量の解析を軸にしながら,グラフ論的計算問題に関する計算量の解析を行った.到達可能性判定問題については,分割幅と呼ばれるグラフの不変量を新たに導入し,分割幅がkの任意のグラフGが与えられたとき,このグラフに対する到達可能性判定問題が決定性Ο(k^2log_2n)領域で判定可能であることを示した.また更に,任意のグラフに対して,その分割幅がpath-width以下であることを示した.これらの結果によって,path-widthがkのグラフに対しても到達可能性判定問題が決定性Ο(k^2log_2n)領域で判定可能であることを示した.一方,この結果の一般化として,到達可能性判定問題の領域計算量とtree-widthとの関係や平面グラフに関する分析を試みたが,本研究期間中には有意義な結果は得られなかった.この研究は現在も継続中である.次に,二つのグラフの間の同型写像の個数を計算する問題の時間計算量の分析を行い,tree-widthがあらかじめ与えられた定数で抑えられたグラフに対して,この問題が多項式時間計算可能であることを示した.この結果の応用として,同型性判定問題についても従来の性能を改善したアルゴリズムを設計することができた.また更に,二つのグラフが同型であるとき,それらの間の同型写像を等確率で生成する多項式時間アルゴリズムも設計できた.一方,グラフ論的計算問題の計算量を分析するための基礎研究として,グラフのハミルトン性について研究を行った.この研究では,ハミルトン性を維持する閉包操作として知られているRyjacek閉包を拡張するものとして,新たにκ-閉包という概念を導入し,3-閉包がハミルトン連結性を保存することを証明した.更に,ハミルトン性に関する一つの尺度として,連結グラフGの最長パスの位数p(G)と最長サイクルの位数c(G)の差p(G)-c(G)について考察し,この不変量の挙動を詳しく分析している.
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