研究概要 |
本研究の目的は,くりこみ力学系の軌道の大局的構造の追跡という観点から,フラクタル上の種々の確率モデルの漸近的性質について研究を進めることである.最終的な目標は,数理物理学,特に場の量子論におけるくりこみ群の方法を念頭において,確率モデルの漸近的性質の統一的な解析手段としてのくりこみ力学系と呼びうる方法の手がかりを見いだすことである.その第一歩となる具体的目標として,本研究ではフラクタル上の等方性の回復という現象に注目する. 本年度発表に至った研究は,等方性の回復の研究の出発点となった,Sierpinski gasket上の漸近一次元拡散に関するくりこみ群による解析を種々のフラクタルの上の拡散に応用したものである.数年来行ってきたSierpinski carpetの他に,我々の創案になるabc-gaskets及びscale-irregular abb-gasketsの場合である.これらのgasketsは,それぞれ,局所的に非等方な拡散が大局的に別の方向に一次元的に拡散するという意味で等方性の回復が起こらない例として,また,完全な自己相似性を欠く例として研究した.Sirpinski garpetなどのinfunitely ramified fractalに比べればはるかにやさしいく,実質的に初期の研究に基づくものであるが,今回科研費が採用になったのを機会にまとめた.
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