異なる銀河団環境における矮小銀河の種族特性

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09640312
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 岡村 定矩 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (20114423)
• キーワード: 矮小銀河 / 銀河団

研究概要

春に観測できる銀河団の観測を予定していたが、望遠鏡時間の割り当ての都合で、我々の次の観測は、1998年5月となった。このため、今年度新たな観測は行なわれなかった。
平成8年度に取得した、かみのけ座銀河団のデータを解析した。銀河団中心部と周辺部の2視野についてデータ処理を完了し、矮小銀河の性質を、おとめ座銀河団のものと比較した。我々に最も近いおとめ座銀河団は、その近さのため矮小銀河の性質が写真観測からすでにかなり知られてる。かみのけ座銀河団は、多数の銀河がほぼ球状に密集する「メンバー数の多い規則的な銀河団」である。一方おとめ座銀河団は、「メンバー数の比較的少ない不規則な銀河団」である。
比較の結果、まずかみのけ座銀河団の矮小銀河も、おとめ座銀河団のものと同様に、銀河中心から半径方向に沿って、いわゆる指数関数型の光度分布を示すことがわかった。次に、矮小銀河の明るさと平均の表面輝度の相関関係を求め、距離の違いを補正してみるとこの関係は二つの銀河団でほとんど同一であることがわかった。これらの二つの事実は、かなり異なった銀河団環境にある矮小銀河の性質が、ほとんど同じであることを示している。このことは矮小銀河の性質を決めるメカニズムは、環境や他の銀河との相互作用ではなく、内在的なものであることを示唆する。また、解析の副産物として、楕円銀河ばかりでなく矮小楕円銀河にも、いわゆる色一等級関係がみられるが、その傾きは、色を測定する開口のサイズによって変化することがわかった。

研究成果

• [文献書誌] Komiyama,Y., Okamura,S., et.al: "Properties of Dwarf Galaxy Population in the Coma Cluster" A New Vision of an Old Cluster : Untangling Coma Berenis. June17-20(in press). (1998)
• [文献書誌] Yasuda,N., Okamura,S.et.al: "Study of the Virgo Cluster using the B-Band Tully-Fisher Relation" Ap.J.Suppl.108. 417-448 (1997)
• [文献書誌] Okamura,S., et.al: "Multi-Color Imaging of Clusters of Galaxies with Mosaic CCD Gameras" New Horizons from Multi-Wavelength Sky Surveys Proc.IAU Symp.179. 287-290 (1998)
• [文献書誌] Okamura,S.: "Cosmological Parameters and Evolution of Galaxies : An Observational Perspective" Proc.The 11th Nishinomiya-Yukawa Memorial Symposium on Physics in the 21th Century,eds.K.Kikkawa et.al.(Singaporc: World Scientific). 1997. (155-178)
• [文献書誌] Komiyama,Y., Okamura,S., et.al.: "Coma Dwarf Galaxies Resemble Virgo Dwarf Ellipticals" poster paper presented at JD2 at IAU 23rd GA in Kyoto. Aug.17-30(in press). (1998)
• [文献書誌] Kashikawa,N., Okamura,S., et.al.: "The Morphology Dependence of Luminosity Segregation in the Coma Cluster" Ap.J.(in press).
• [文献書誌] Okamura,S., et.al: "IAU Symp." Color of Dwarf Galaxies in the Coma Cluster, (183)
• [文献書誌] Yagi,M., Okamura,S.et.al.: "IAU Symp." Type-Specific Luminosity Functions of Nearby Clusters of Galaxies(in press), (183)