1998年4月に、ラパルマ天文台の口径4.2mのウィリアムハーシェル望遠鏡で、かみのけ座銀河団の矯小銀河約500個のスペクトルを得た。また、5月には我々のモザイクCCDカメラを、同望遠鏡の主焦点につけて、かみのけ座銀河団、おとめ座銀河団(一部)、及びヘルクレス座銀河団の観測を行い所期のデータを取得した。 かみのけ座銀河団の撮像データの解析から始め、矮小銀河の性質をおとめ座銀河団のものと比較した。かみのけ座銀河団は、多数の銀河がほぼ球状に密集する「メンバー数が多く渦巻き銀河をほとんど含まない規則的な銀河団」であり、一方おとめ座銀河団は、「メンバー数が比較的少なく渦巻き銀河を多く含む不規則な銀河団」である。 比較の結果、まず、かみのけ座銀河団の矮小銀河もおとめ座銀河団のものと同様に、銀河中心から半径方向に沿って、いわゆる指数関数型の光度分布を示すことがわかった。次に、矮小銀河のの真の明るさと面輝度の相関関係が二つの銀河団で極めてよく似ていることがわかった。この二つの事実は、大きく異なった銀河団環境にある矮小銀河の性質がほとんど同じであることを示している。矮小銀河の形成に関しては、先天的な要因によってその性質がほとんど決定されるという考え方と、銀河団内部での銀河同士及び銀河間物質との相互作用によって性質が変成されるという考え方がある。上記の知見は、矮小銀河の性質を決めるメカニズムは、環境や他の銀河との相互作用ではなく、内在的なものであること、つまり、前者の考え方を支持する。 また、解析の副産物として、通常の巨大楕円銀河ばかりでなく、矮小楕円銀河にも、いわゆる色一等級関係が見られること、その傾きは、色を測定する開口のサイズによって変化することがわかった。この原因を調べるため、矮小楕円銀河内の色分布を調査中である。
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