星間塵におけるトンネル反応を含む化学反応のシミュレーション実験を目的として、四重極質量分析計及びフーリエ変換赤外分光計を備えた超高真空排気装置の製作を行った。実験においてとくに重要なのは、冷えた水素原子のみを含む水素発生装置の開発である。これを目的として、プラズマを用いる装置を開発した。これは、くびれをもつ放電管で、内圧を高めかつガスの供給量を抑えることかできる。2つのオプティカルトラップを有するので、放電管外壁をグラファイトで厚く塗布することで、完全に紫外線照射効果を抑えることに成功した。また、モリブデン製のスパイラルコイルを封入することで、基板への荷電粒子照射効果を完全になくすことに成功した。窒素/一酸化炭素混合ガスのプラズマ放電により、CNラジカルを生成し、シリコン基板に蒸着した。これと水素原子を反応させ、HNC/HCN生成比をFT/IRにて測定した。また、ジシアンの光分解によるCNラジカルの生成についても検討した。さらに、炭化水素と水素原子の反応を検討し、炭化水素の不飽和度によって、水素原子とのトンネル反応の速度が大きく異なることを見いだした。
|